小さい頃からマーガリンしか家になかった僕は、バターに畏敬の念を込めて見つめる。
松茸と同じ。
それが自分にとって本当に美味しいと感じるものかもわからないのに、素晴らしいものだと決めつけている。
裏腹に、その高級品と位置付けたバターを恨んでもいるのである。
「あんなものは太るだけだ」
「マーガリンの味には敵うはずがない」
「バターすぐ溶ける」
今思えば、最後の「すぐ溶ける」は、“良さ”だと思うのだが、そんな瑣末なことは関係ないのも、このコンプレックスを抱いた逆恨みの特徴だ。
ホットケーキにバターとシロップなんて。
もう映画の中のお話しに違いない。
現実には全てマーガリンのはずだ。
バター
バター
あぁ、その響きよ。
バター
極楽浄土の響き(言い過ぎ)
その呪いを解く為にも買ってみたが、使い所がわからず賞味期限とのにらめっこなのであった。
そう、僕は未だに呪いの最中なのである。